夕張出身で米国ロサンゼルスを拠点に活動する写真家渡辺博史さん(55)が、米オハイオ州の大学美術館主催のコンテスト「写真のいま 100人の作品集」に日本人としてただ一人選ばれた。世界各地の風景を幻想的にとらえた作品などモノクロ十二点が高い評価を得た。本格的な活動を始めて十一年。米国の写真関係団体の賞も今年受賞した渡辺さんは「うれしい。日本でも作品を発表できれば」と喜んでいる。
「写真のいま」は、同州デイトンにあるライト州立大美術館が写真家一人につき十二点を公募する形で企画。六十カ国から約千三百人の応募があり、審査員六人の選考で百人に絞り込んだ。渡辺さんの作品は太平洋の米ミッドウェー島で撮影したカモメ科の鳥・シロアジサシ、大阪の通天閣、アイスランドの海などが題材で、六月ごろ、結果を伝えられたという。
審査員を務めた倉石信乃・横浜美術館主任学芸員は「国や文化の異なる場所が十二点にバランスよく配置され、国際的な視点を巧みな技術で表現した」と評価。選ばれた百人について「今後の活躍が期待される人が多い」という。百人の作品を収録したDVDが来年、米国で発売され、作品展も開かれる予定。
また、シロアジサシの写真などは米国の写真賞「クリティカル・マス」の最高賞も受賞。写真家らの団体「フォトルーシダ」が数年前創設した賞で、渡辺さんの作品は「見る者に一瞬にして知的な衝撃を与える」と評価された。受賞作を含む渡辺さんの作品集が同団体から刊行されるという。
夕張生まれの渡辺さんは札幌で小中学生時代を過ごし、函館ラ・サール高を経て日大芸術学部写真学科を卒業。米国にあこがれて一九七五年に渡米、現地でテレビCM制作に携わった。九五年ごろ写真家として活動を本格化。世界各地の風景、肖像を中心とした作品を欧米の写真誌などに発表し、英国の写真賞などの受賞歴があるという。
渡辺さんは「今後は北朝鮮などをテーマにした作品に取り組みたい」と意気込んでいる。